<実践>発注のための熱間鍛造ガイド

金属部品製造をお考えの製造メーカー担当者様に
熱間鍛造コンサルタントの德田勝也が、
今すぐ役立つ知識やノウハウを解説いたします。

<第11回>精度アップ 工法解説

現在、鋳造等により製造している部品を、
熱間鍛造への工法変更により
精度アップする方法について解説いたします

その①:鍛造金型の高精度化について

現在、鋳造により製造している部品を、熱間鍛造に変えることで、精度アップを図ることができます。

「鋳造」は、金属を高温で溶かし液状にして、砂型に流し込み成形する工法です。細かい形状の成形には向いていますが、木型と砂型という不安定な「型」を使用する事や、製品の表面・内部に細かい気泡(鋳巣)が発生するなど、加工精度は低くなります。そこで、鍛造工法へ転換することにより、精度アップを図ることが一つの解決策となります。

精度アップを実現する第一のポイントは、鍛造金型の高精度化です。鍛造による製品の公差が、仮に1/10ミリレベルだとすると、金型の公差はそれより一桁多い1/100ミリレベルまで高精度化する事が一つの鍵となります。ここまで金型精度が高ければ、鍛造品の精度に問題が生じた場合、金型ではなく鍛造プレス機の方の原因追究を行い、調整を図る事ができるからです。

その②:炉の加熱温度の安定化について

精度アップのポイント、2つ目は、材料を加熱する炉の温度が安定していることです。

熱間鍛造に最適な温度は、材料によって異なりますが、例えば真鍮の場合700~750℃程度となります。この温度帯を維持するために必須なのが、誘導加熱炉です。高周波電流が流れるコイルの中に金属丸棒を挿入することで、磁力により金属内部に熱を発生させるしくみです。火力の調節により温度を調整するガス炉に比べ、高周波誘導炉は電気制御により常に細かく温度を設定できるので、を抑えることが可能になります。

その③:高精度かつ最適な鍛造プレス機の選択について

現行の鍛造部品の精度が出ない場合、ほとんどの原因は機械側にあります。鍛造プレス機には、上型と下型がズレないようガイドピンで繋がっていますが、機械のパワーが圧倒的に強いため、スクリュープレスの場合、ねじれ方向にズレが生じてきます。最初は上下の型が完全に垂直に、良いクリアランスの状態で稼働していても、何千回・何万回と打っている内に、ガイドピンもそれを通すガイドポストも摩耗していくので、だんだんと金型周囲も摩耗してくるわけです。これが、製品の精度不良に繋がっていきます。

特に、ホイールを回転・落下させて材料を打撃する「スクリュープレス」は、金型にねじれのトルクが大きくかかるため、精度にばらつきが出がちです。

そこで、部品のサイズや形状によっては、上死点・下死点が決まっていて材料に安定したエネルギーを与えられる「クランクプレス」の選択も考慮に入れると良いでしょう。パワーが必要なのか、精度が必要なのかという目的に合わせて、多様なプレス機の中から最適な鍛造プレス機を選択できる鍛造加工メーカーに依頼できれば、精度面で有利と言えるでしょう。


まとめ:技術力ある鍛造会社への依頼により、高精度加工が可能

このように、精度向上を追求している熱間鍛造会社に依頼する事で、部品の精度アップは可能となります。まずは、高精度加工を謳っている事業者の中から、最適な発注先候補を探す事から始めてみて下さい。