<実践>発注のための熱間鍛造ガイド

金属部品製造をお考えの製造メーカー担当者様に
熱間鍛造コンサルタントの德田勝也が、
今すぐ役立つ知識やノウハウを解説いたします。

短納期化

<第5回>軽量化 工法解説

現在、鋳造や切削加工により製造している
部品を、熱間鍛造へ工法を変更することで
軽量化する方法について解説いたします

その①:薄肉化による軽量化について

現在、鋳造や切削加工で製造している部品を、熱間鍛造に変えることで、軽量化を図ることができます。

その理由は、鍛造を行うことで材料の強度が増すため、薄肉化を実現できるからです。
鋳造や切削加工とは異なり、鍛造では材料に打撃や圧力を加えます。これにより、金属内部の組織が整い、強度がアップするため、薄肉化を図ることが可能となり投入材料を減らすことができます。すなわち、従来と同じ強度を保ちながら、軽量化を実現できるというわけです。

一般的に、開発担当者様が鋳造やダイキャスト工法を選択する理由として、細かい形状を成形し易い事が挙げられます。しかし、鋳造やダイキャストは鍛造に比べて強度が低く、また品質にバラツキが出やすいため、それを見越して肉厚な設計をしておかねばならず、結局重量がかさんでしまいがちです。

そこで、鍛造工法への転換により、品質を安定させ強度を上げることで、軽量化を図ることが解決策となります。

その②:アルミ鍛造による軽量化について

2つ目の軽量化施策は、材質のアルミ化です。

アルミの比重は真鍮の約3分の1ですので、同じ形状なら約3分の1まで劇的に軽くなります。さらに、鍛造により薄肉化できるため、さらに軽くすることが可能です。

例えば、「軽くて強い」アルミ鍛造品の特長を活かした部品として、自動車の懸架装置(サスペンション)が挙げられます。軽量かつ安全性を求めた結果、アルミ鍛造品が多く採用されているのです。

その③:真鍮からアルミへの変更で、製造コストは安くなるか?

では、製造コスト面はどうでしょうか。最も劇的に軽量化を図れる典型例として、従来の黄銅「鋳造」品を、アルミ「鍛造」品へ変更するケースを見てみましょう。

■材料費は安くなる?

市況によりますが、現在は、高騰している真鍮よりもアルミの方が材料費は安くなります。さらに、鍛造により薄肉化を図ることで、大幅なコストダウンを実現できます。

■鍛造加工費は安くなる?

一方、鍛造加工費では、黄銅よりアルミの方が加工難度が高いため、高額となります。

<その理由は…>

  • ①鍛造に最適な加工温度が、黄銅の約700℃に対し、アルミは約400℃とかなり低く鍛造が難しいこと
  • ②しかも、アルミは熱伝導性が高い(熱しやすく冷めやすい)ため、金型を常に熱しながら鍛造する必要があること

具体的には、黄銅の場合、温度は材料の赤色の度合いを目視することで判断できますが、アルミの場合は材料の色が変わらないため、常に計器で温度測定しながら鍛造を行う必要があります。また、金型の温度が低すぎると金型を破損しますし、逆に高すぎると「オーバーヒート」と言って、高温の金属材料が飛び散る危険な状態になるため、温度管理には細心の注意が必要です。

これらの要因により、アルミは黄銅に比べての鍛造加工費が高くなるのです。

■切削加工費は安くなる?

鍛造後に行う切削加工費についても、黄銅に比べてアルミは比較的切削が難しい材料であるため、黄銅よりも高額となります。

以上、黄銅をアルミに変えることによるコストは、プラス・マイナス両方の要因があり、また、個々の製品の形状とロット数にもよたりますので、熱間鍛造加工メーカーに相談すると良いでしょう。

まとめ:アルミ熱間鍛造に変えることで、軽量化が可能

鉄や真鍮よりも、比重の軽いアルミを使うことで、大幅な軽量化が実現できます。さらに、鍛造や後工程の切削加工しやすい形状に再設計することにより、トータルコストダウンを図ることも可能です。寸法公差をむやみに厳しくするのではなく、緩めるべき箇所は緩めることで、できるだけ切削レスになるよう工夫することが、コストダウンのポイントと言えるでしょう。

さらに、樹脂部品においても、「強度や耐候性を上げたい」「かつ、軽量化を図りたい」というニーズに対し、アルミ鍛造への工法変更は非常に効果的です。

短納期化