<実践>発注のための熱間鍛造ガイド

金属部品製造をお考えの製造メーカー担当者様に
熱間鍛造コンサルタントの德田勝也が、
今すぐ役立つ知識やノウハウを解説いたします。

短納期化

<第7回>強度アップ 工法解説

現在、鋳造等により製造している部品を、
熱間鍛造に工法変更することにより、
強度アップする方法について解説いたします

その①:鍛造による強度アップについて

現在、鋳造や切削加工により製造している部品を熱間鍛造に変更すれば、強度アップを図ることが可能です。

鋳造部品の金属組織は、結晶の並びが粗く不規則で、強度が低くなっています。
一方、鍛造部品においては、赤くなるほど熱した高温の金属材料に強い圧力をかけることで、緻密で方向が揃った金属結晶組織が形成されます。この金属結晶組織のことを、「鍛流線(メタルフローライン)」と呼びます。これにより、強度がアップするというわけです。


その②:材質変更による強度アップについて

金属部品の強度アップを図る場合、鍛造化と併せて解決策の一つとなるのが材質の変更です。

従来、黄銅(真鍮)を使用していた部品であれば、アルミニウム合金(例えばA6061等)に変更、さらに「T6」と呼ばれる熱処理を行うことにより、重さは約3分の1まで軽量化しながら大幅な強度アップを実現できます。

アルミ合金への「T6処理」とは?

T6処理は、6000番台のアルミニウムではよく行われているポピュラーな熱処理方法です。

まず、アルミニウム合金を、約500℃に加熱し保持(溶体化処理)→急速に冷やす(焼入れ)を行います。そして最後に、約200℃に再加熱(人工時効処理)を行い、残留応力を開放させます。(「残留応力」とは、加工に伴い金属内部に残る、元に戻ろうとする力(歪み)のことです)。

これら一連の「T6処理」を行うことで、アルミ合金として最高クラスの強度を得ることができます。

(なお、余談ですが、真鍮(C3771)に対しJIS規格で求められている熱処理は、残留応力を抜いて割れを防ぐことが目的です。この場合は真鍮は柔らかくなるため、逆に強度は落ちます)

まとめ:アルミ熱間鍛造への変更により、強度アップが可能

このように、鍛造化+アルミニウム合金への材質変更+熱処理を行うことで、鉄並みに強度を高めることが可能です。

もちろん、材質選定は強度だけではなく、耐食性など使用環境も考慮する必要があります。例えば水回りの部品であれば、水道水に対して耐食性が高い黄銅を使用するのが一般的です。何を優先するかによって、最適な材質を選択すると良いでしょう。

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