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鋳造から鍛造へ。製法変更の巻

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


いつも鍛造学ブログをご覧頂きまして、誠にありがとうございます。


さて、猛暑の中、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?

今夏も弊社工場の出入口に掛かっている温度計の針は、連日40℃近辺に貼り付いており、炎天の外界と冷房が効いた工場内との半端ない温度差に、身体がついてきておりません。


さて、令和になって初めてのブログの更新です(苦笑)。
実は、昨年の秋から新卒採用の関係の仕事で合同説明会や面接等で何かと慌ただしくしており、その甲斐あって久しぶりに来春から弊社に新しい仲間が2名増えそうですが、長らく筆が止まっており申し訳ありませんでした。


今回は、「アルミニウム鋳造から鍛造への製法変更」について、お客様からのご依頼に対応させて頂いた事例をご紹介したいと思います。


顧客秘密保持の観点から、最終ユーザー様の社名を明かすことはできませんが、
この案件は弊社では初めてのオリンピック特需に関係するお仕事でした。

「国内外から多数の人々が集まるTOKYO2020において、セキュリテイの向上を目的に、
従来アルミ鋳造製法で製作していたドアハンドルを、
強度と品質の安定性に優れる鍛造製へシフトしたい」
と、お客様からお声掛けを頂きました。


早速打合せましたところ、
完成納品までのスジュールが非常にタイトだとわかりましたが、
幸い昨年に追加導入した安田工業製の超高精度ジグボーラー(縦型マシニング)が大活躍しました。

これらのジグボーラー×2台を並行稼動させることで、上下の金型を同時に製作、
型彫りをわずか3日間(当社従来比で約半分)の短納期で完成することができ、
お客様にも大変喜んで頂きました。


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今回、弊社にて製作した鍛造金型です。


従来、このようなL型形状の鍛造品は、
キズ、カブリ、巻き込みといった鍛造欠陥が出やすく、
鍛造業の仕事の中でも最も手を焼く製品の一つでもありました。

そこで弊社では、
長年の経験をもとに独自の「隠し味的ひと手間」(←コレ企業秘密です)を開発し、
それを加えて鍛造することによって不良率を大幅に低下させ、
より一層の品質安定化に成功しました。

鍛造前の素材と、プレスを行った後の鍛造品の仕上り形状を、こちらの写真でご確認下さい。


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素材はアルミニウムの丸棒です。


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プレス加工後。高精度なL型形状に仕上がりました。


このように、鍛造後の外観精度が鋳造品より非常に安定しているため、
従来からお客様の方で行われている二次加工においても、
「切削不良が削減された」という嬉しいコメントを頂いています。

こうして大幅な品質安定化と納期短縮化を実現でき、
お客様の必要とするタイミングで鍛造品をご提供し、お役に立てたことは、
モノづくりの冥利に尽きます。

既存製品の品質安定化や、仕上り不良の削減を図りたいお客様に、
鋳造品の鍛造化をぜひお薦めします。
サンプル品や図面等を元に、誠心誠意アドバイスをさせていただきますので、
お気軽にご相談下さい。


また、次回も鍛造についての実践的な知識を、本ブログでご紹介してまいります。

生産性アップの巻

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


長かった酷暑もようやく過ぎ去り、朝夕の涼しさに秋の訪れを感じるこの頃ですが、
皆様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?


さて、今回の主題は「生産性アップ」ですが、
その前に、今夏、各地で自然災害に見舞われた皆様に、心からお見舞い申し上げます。

大阪北部地震に西日本豪雨水害、過去最高の猛暑日、台風、北海道胆振東部地震等々...と、
立て続けに起きる異常気象に、平成最後の年どころか、もしや日本列島最後の年かと思うほどです。

その中で、天気予報から繰り返し流れてくる
「厳重な警戒をして下さい」という言葉が、耳につきました。
大変重みのある言葉ですが、具体性がなく、「では、何をすればいいの?」と、
原稿を淡々と読み上げているテレビ画面の気象予報士に向かって、
一人突っ込みをしておりました(笑)。


それはさておき。
今回のテーマ「生産性アップ」とは、
何のことはない、金型製造設備を新たに増設したというお話です...(笑)。

約9ヵ月の納期を経て、9月2日に弊社のNEWマシンが無事納入。


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なんと20tクレーン車がお出ましし、天候にも恵まれてスムースに所定の位置へON。


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安田工業(株)製タテ型マシニング加工機


これでマシンニング加工機が1台から2台に増えたため、
生産効率が2倍になったのは当然のことですが、
弊社の考え方としましては、まず「金型製作納期の短縮化」につなげるのが第1の目的です。

鍛造金型は、ご承知の通り上下1組ですから、
上型と下型と2台の機械で同時加工すれば加工時間は半分で済みます。


一方、金型の下処理加工と焼き入れ時間は変わりませんが、
それを織り込んでも、今まで最短7日間で金型が完成していたところを、
当該設備の導入により約2日間の製作短縮が可能となり、
なんと最短5日間で鍛造金型を完成させる事が可能となりました。
(※但し、製品形状にも依存しますが)

もちろん、これはお客様から鍛造承認図のOKを頂いてからの納期であって、
その時の弊社の諸事情によって納期は変わりますことをご理解くださいませ。


なお、この製作時間の短縮化メリットは、新規金型だけではなく、
既納先のお客様の鍛造品納期にも及ぶことは言うまでもありません。

そして、新設備を導入した第2の目的は、「残業ゼロ」を目指すことです。

「働き方改革を!」と言われて久しく、
私たちも常々努力して時短を推進しなければと思っていますが、
ともすれば掛け声だけの「時短、時短」になりがちです。

また、根本的な業務改革や合理化が出来ていないのに時短だけを推進しても、
仕事が消化不良になりどんどん滞留する一方なのは自明の理で、
実際にそれで苦労している会社さんも多いと聞きます。

そこで弊社におきましては、
先行投資として最新設備を導入し、生産性のみならず付加価値向上を目指すことで、
結果的に時短に繋げられればと考えております。


兎にも角にも、納期短縮化でお客様に喜ばれ、残業ゼロで社員達にも喜ばれ、
その結果会社の業績が向上すれば万々歳...というもくろみが絵に描いた餅にならないよう、
これからも日々精進してまいります。

新たな設備増強により一層スピーディーな熱間鍛造が可能となった中野鍛造所を、
今後ともご贔屓のほど宜しくお願い申し上げます。

バリと離型剤の巻

今年の夏は、例年にない酷暑となり、熱中症が多発して、鉄道の運行にまで支障をきたすほどですが、皆様はお元気でお過ごしでしょうか?

弊社の神鍋工場は、兵庫県北部の高原地帯にあり、夏場は都会に比べて過ごし易い気候ではありますが、さすがにこの夏は工場内の気温もぐんぐん上昇。社員には、十分な水分やミネラル補給、休憩など、熱中症対策をとってもらっております。

さて今回は、この厳しい暑さをものともせず、「摩擦」と「バリ(張り)」の熱い共存関係についてお話をしたいと思います(笑)。


熱間型鍛造の場合、基本的には被鍛造材が鉄であれ、ステンレスであれ、はたまたアルミニウムや黄銅(真鍮)であっても、鍛造すれば必ず「バリ」が出ます。

と申しますと、「あれ? 中野鍛造所は、バリ無し鍛造品を製造していますよね?」と鋭いご指摘を受けそうですが、私どものバリ無し鍛造は非常に特殊で限定的な方法なので、今回は一旦横に置いてくださいませ(汗)。今回お話しするのは、鍛造の一般論となります。

実は、一見ムダに見えるこのバリは、マジにエエ仕事をしております(笑)。

それはどう言う事かと申しますと、鍛造型の彫り面には、複雑な輪郭や角々しい面の繋ぎ、または大きな曲面と小さな隅Rの組み合わせ等、さまざまな形状があります。


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その金型の上に真っ赤に焼けた円柱形の材料を置き、プレス機で金型に押し込んで成型するのですが、その際、製品内部に発生した内部の欠陥(巻き込み、被りと言われるもの)を鍛造製品内部から外部に排出する作用を担っているのが、バリなのです。


つまり、内部欠陥が無いのは、バリのお蔭という事になりますね。


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そして、バリの二つ目の仕事は、プレス成型時に金型の彫面(実際の鍛造品の形状の彫り込んだ箇所)へ材料を押し込む役割です。

バリは薄いため、金型表面上で早く冷えて固まり、それがブレーキ役となって、圧造中の熱い材料が金型の隅々までへ流し込まれます。このように、バリは鍛造成型の手助けをしているのです。

ですから、鍛造屋の生産技術の腕の見せ所は、いかに最小限の面積のバリで鍛造品を成型させることが出来るかにあります。

もちろん、使用するプレスの最大加圧能力や、それに相応しい製品の大きさや形状、選定する材料のサイズや質量等がすべて整って、初めて「良い鍛造品」の製造が可能になるのですが、基本はやはり金型の設計がとても重要になります。


と、ここまではバリバリとバリの話ばかりしてきましたが(笑)、鍛造時にもう一つ重要な要素が、材料と金型の「摩擦」を低減する「離型剤」です。

金型に離型剤を塗布する狙いは、鍛造成型時の摩擦を低減させ材料を金型へスムーズに流し込む「潤滑性」と、鍛造品を金型から素早く取り出す「離形性」の向上です。さらに、金型表面の温度を下げる「冷却効果」も目的の一つです。

また離型剤には、「油性」と「水溶性」の二種類があり、鍛造特性により使い分けます。詳細は企業秘密で明かせませんが(笑)、一般的に金型表面温度をあまり上げたくない場合は水溶性、鍛造性の向上を狙う場合は油性を使う場合が多いです。

しかし、仕上状況によっては、あえて例外的な選択をする場合もあります。例えば、金型表面の潤滑性が良すぎると、材料が先にバリとなって外に出てしまい「欠肉」という製品不良になりやすく、逆に潤滑性が悪すぎると、離形性が悪くなり金型にくっ付いてしまい生産性が上がりません。

そんな時は、弊社独自のノウハウにより、生産性が安定するような㊙テクニックを使っています(笑)。


このように、「摩擦を制する者は鍛造を制する」と言われるくらい、良い鍛造品を造るためには「バリと摩擦(離型剤)」のコントロールは複雑かつ重要で、一見、餅でもつくかのごとく簡単そうに見える鍛造現場とは裏腹に、まだまだ高度な技術力と長年の経験値がモノ言う世界です。

この点において、55年以上の鍛造実績のある弊社の自動鍛造ラインは、無類の安定した生産性とスピードを自負しており、お客様にはいつでも短納期で、質・量ともに安定した鍛造品の提供が可能となっております。

いつでも私徳田が、さまざまな問題解決のためのご提案をさせていただきます。品質のバラつきや納期等、お困りの事があれば、是非中野鍛造へご相談ください。

黄銅材料の時期割れ(応力腐食割れ)について

鍛造ブログ 担当の徳田です。


毎朝の蝉の鳴き声と真っ青な空が夏本番を感じさせてくれ、大変暑い日々が続いていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

先ずは、この度の西日本豪雨ではお亡くなりなられた方々のご冥福と、被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

さて、この大雨による川の氾濫は、一夜にして家族や住宅を失ったり、人々の日常生活を奪ったり、ここ最近の大阪北部地震と言い、大自然の振るう猛威には、人間は為す術がないことを痛感させられる災害でした。

これから夏本番をむかえて被災地では厳しい暑さの中での避難生活、また復旧、復興作業が続くかと思いますが、被災者の皆様におかれては体調に留意され、一日でも早く日常生活に戻られる事を祈念しております。


ところで、話が変わりますが、毎年京都では、7月1日から1か月間にわたり祇園祭が始まります。なんといっても見どころは、山鉾巡行(前祭)の7月17日前後で、最大の人出となります。

またこの頃から関西はようやく本格的な夏の始まりになると言われていて、一段と麦酒が美味しくなり、飲む量もとても進むのは言うまでもありません(笑)


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それでは、本日のテーマは「時期割れ」についてお話したいと思います。
まず、金属には使用環境との相性というのがありまして、例えば磁石でいうならばN極とS極みたいなものなんです。

たとえば磁石であれば、N極とS極であればお互いに引き合い相性が良いのですが、NとN、SとSのように同極同志であれば反発し合いますよね。

但し、金属の場合になりますと、特に冷間加工を施した合金の場合は(黄銅に限らず)特定の環境において、その金属に付いたわずかな表面キズや欠陥が、いつの間にか思わぬ程大きく広がり、全く大きな力が作用していないにも拘わらず割れや破断にいたるときがあります。

これを「時期割れ」や「応力腐食割れ」と言います。

英語では「SEASON CRACKING」(シーズンクラッキング)とも言います。


その語源は昔に、黄銅製の薬きょうを船で輸送中、長期間にわたり船内の塩水やアンモニアの雰囲気に曝されていたため、荷揚げして開梱してみると薬きょうが割れて使い物にならなかったことに由来しています。

基本的に純金属の場合は時期割れが発生しないと言われていますが、私たちが日常的に使用している金属の多くは合金なので、その金属の種類と使用環境は非常に重要になります。

例えば、一般に銅合金と言ってもざっくりと10種類あり、使用部位により使い分けされています。

例えば先日、お客様から「高力黄銅」と言う材料でボルトを造っていますが、製品使用中にそのボルトが折損しお客様からクレームが来ているのだけど原因がわからないとの相談を受けました。

このボルト(冷間加工製)は人命を守る金具に使用されており、設計思想ではその字の通り黄銅の中でも比較的強度の高い材料を選定されて安全マージンを高くして折れにくく計算されていました。

しかし、強度優先であれば他の合金材料でもよいのですが、銅合金には「防爆性の高さ」があり、今回の製品ではその機能が必要でした。

※防爆性...金属同士の摩擦でも火花が出にくい特性のこと


つまりこのボルトの必要な機能は「高強度」+「防爆性」であり、それに相応しい材料という事で当該材料を選定されたようですが、この材料は黄銅の種類でも比較的時期割れし易い材料であった為に、先ずはアンモニアイオンや塩分の多い環境で使用されていなかったか調査して下さいとお伝え致しました。

特に黄銅はフェノール樹脂との組み合わせで、アンモニアが発生し応力腐食割れが発生しやすく、ステンレス鋼では塩素の雰囲気がその割れを進行させ、アルミニウムは水蒸気や海水がその原因になることが多いのです。

ですので、設計の際は十分に留意されることをお勧め致します。

また、基本的に同じ黄銅材でも高力系の強度の高い材料ほど時期割れの進行が早い場合が多くなるのは、その物性として靱性(粘り)が少ないためだと思われます。そこで、金属の選定にあたっては極端に「硬さ」ばかり求めるのではなく「靱性(しなやかさ)」のバランスがとても大切になります。ちなみに先のボルトの材質に関しましては、お客様には熱間鍛造から切削品にとお薦めし、「高強度」+「防爆性」にバッチリ対応。無事ボルトの問題は解決されました。


これからも中野鍛造所では鍛造のみならず、金属加工のソリューション企業としてお客をサポートしてまいりますので、ぜひ鍛造を始め、金属加工部品等にお困り事がれば、何なりと遠慮なく、中野鍛造所までお申し付けください(笑)。

ステンレス鍛造について

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


今年の春は例年より早く桜が開花し、気温が高くあっと言う間に葉桜になってしまいましたが、皆様はこの短い春をどのように楽しまれたでしょうか?

小生は休憩時間に弊社の近くの公園でお花見をしたくらいで、「花見で一杯」とはなりませんでした(笑)。

それよりもこれだけ連日の好天が続くと、近々ゴルフコンペがあるので確率的に当日の空模様が気になります、今日この頃です(笑)。


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さて、今回のブログは、少しでもお役に立つ内容を提供したいと言うことで、真剣な内容にいたしました。ズバリ「身から出た錆が身を守る?」...の巻です(笑)。


まず、この世にはたくさんの種類の加工材料、材質がありますが、鉄をはじめアルミニウム、黄銅、銅、樹脂等々の最終表面仕上げ(トリートメント)を施す方法の一つに「メッキ(鍍金)」があります。

メッキには色んなメリットがありまして、例えば装飾品のネックレスやブレスレットには金メッキや銀メッキ、ロジウムメッキ等を付けることにより、地金の色を隠して美しく見せたり、また耐食性を向上させたり、キズを付きにくくしたり等と、様々な効能があります。

しかし、ご存じのように「メッキは剥げる」という慣用句的言葉があるように、メッキ品の経時劣化の進行は食い止めることが難しいのですよ(苦笑)。


では、メッキしないでも錆びない金属は?と聞かれると、殆どの方は「ステンレス」とお答えになられますが... そうです。一応正解です!

でも厳密にいうと△なんですよね...。

と言いますのも、一般的にステンレス・スチールの主成分は鉄で出来ており、そこにクローム(Cr)という元素を12%以上添加し、錆びにくく改良したものなんですね。

また、ちなみに英語のStainは「汚れや錆」の意でLessは「無い」の意。二つの語彙を合成して錆びない鋼という意味があり、英語表記ではStainless Steelとなります。

実際には、ステンレスに含まれているCr成分と酸素が結合して、不動態被膜という肉眼では見えない薄い酸化被膜をつくっているので錆が進行しない訳なんです。

この被膜はとても薄いですが大変強いので、カネ束子などでゴシゴシ傷つけても周りにある酸素とCrが直ぐに結合し自己再生して被膜を作ってしまうのですね。

つまり、ステンレスは「錆びない」のでは無く、厳密にいうと「身から出た錆(酸化膜)が自分の身を守っている」という事です。ホント凄いですね~(笑)。

 
そんな錆びにくい特性を持つステンレスは、表面処理しなくとも素地のままで使えてしまうので、最近はジワリジワリと水栓金具業界に浸食中なんですよね(汗)。

例えば、黄銅製水栓金具部品の場合、加工後に研磨とクロームメッキを施してあの台所にあるピッカピカのワンハンドルのカラン(水道蛇口)等に変身するのですが、ステンレス材に変更すればメッキ工程が無くなるのでは?とお考えになられるお客様がおられますが、確かに黄銅からステンレスへ材質変更すれば材料費は安くなりメッキ費も発生しないので良いこと尽くめと思うケースが見受けられるのですが、そうは問屋が卸さない理由がありまして...。←古い(汗)

その答えは、時代や技術が進みチタンやインコネルといった難削材が加工できる時代になりましたが、実はステンレス(SUS304、SUS316)材も、やはり難削材の一つで、黄銅材やアルミニウム材に比べて加工コストは、かなり高くなるのですよ(笑)。

例えば黄銅材であれば、ドライ(切削油無し)切削加工が出来ますが、ステンレス材の場合は加工熱で発火する恐れがあるので、回転速度と送り速度を下げて切削油を掛けながら切削する必要がありますし、なにせ大変硬い材料なので刃具の消耗も早いので、その結果工具費も嵩むのですよね。

 
ですから、単純にステンレスの材料費のコストが黄銅より25%安いからと言っても、加工費を含めたトータル価格では逆に高くなるのが一般的なんですよ。

製法や材質によって加工費が変動することを、私たちがお客様に今まで詳細なご説明をあまり伝えてこなかった事は否めませんが、コストを中心に考えた場合、「身ら出た錆」の本来の意味とは真逆の意味を含んでいるのがステンレス鋼の特徴と言えるのは何となく面白いですよね~(笑)

鍛造や切削についてのお困りごとや疑問などございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせ下されば問題解決の一助としてバッチリとサポートさせて頂きますので、引き続き中野鍛造を宜しくお願いいたします。

アニール処理について

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

皆様、大変ご無沙汰しております。


さて、今年の冬は例年に増して、日本の上空で冬将軍が居座り列島各地に大雪の被害をもたらしているようですが、皆様の地域で雪の影響は如何でしょうか?

なにせ、今年の大雪は地球温暖化による異常気象なのか、はたまた、人間の利便性ばかりを追求した現代の都市構造や社会システムが雪害に弱いのか、とても議論の分かれるところではありますが、「備えがあれば憂いなし」...って言葉は、今回本当に身に染みて大切だと思いましたね(汗)。

では、早速本題に入りたいと思いますが、今回は、熱間鍛造処理のクオリティをより高める、「アニール処理」についてお話したいと思います。


例えば、人間は体の芯からカチカチに凍るくらい冷たい氷点下の屋外から、暖房の効いた暖かい屋内に移動したりお風呂に入ったりすると、全身の血液の巡りがよくなり肩や首、関節の筋肉がほぐれてリラックスできますよね。

実は、金属の成型品や樹脂成型品、切削加工部品も人と同じように素材に合った一定の条件で温めると、素材の内部応力が抜けていきストレスフリーに(柔らかく)なるんです。

これを、焼鈍(焼きなまし)処理といいます。又は、「なまくら」ともいいます。

よく世間で言う、「温室育ちで環境の変化について行けない人」のことを「あいつなまくら(鈍ら)やなあ」と言う同じ意味です(笑)。

少し話しが逸れましたが(苦笑)、熱間鍛造加工では焼鈍する事により、後加工での歪の影響を最小限にとどめることができ、より高品位な製品に仕上げることが可能になります。そして、金属は焼き入れや焼鈍する事により、その金属の特性を自ら変化させて、強くなったり柔らかくなったり、靱性やしなやかさを持ち合わせさせたりすることもできます。

また、鉄の熱間鍛造加工を施すことにより、結晶粒が肥大化したものを標準組織に戻す場合は「完全焼きなまし」といいますが、残留応力除去が目的の場合は、それと区別してアニール処理または「ひずみ取り焼きなまし」と呼んでいます。

その残留応力には、「引張残留応力」と「圧縮残留応力」と二つの成分があって、材料の内部から外部(外側)に向かう力が「引張残留応力」で、その逆で材料の内部(内側)へ向かう力が「圧縮残留応力」といいます。



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<引っ張り残留応力の模式図>


特に、黄銅材やアルミニウム材を熱間鍛造した場合には、素材が外側から冷えていくので、内側が先に冷えた外側に引っ張られ、その状態では常に引っ張り残留応力が残るのです。

そういった残留応力の残った材料などで切削加工を行うと、そのバランスが崩れて歪や反りといった問題が発生しやすいので、加工前にアニール処理を行うことにより、常に安定した精度で部品が製作できるようになります。

ちなみにアニール処理は、実は金属だけではなく、反りや割れの防止に身の回りのプラスチック製品にも施されています。


この優れたアニール処理に関心があられる方は、まずはお気軽に、私、徳田までご相談下さい。検討される鍛造加工品に合わせて、最もベストな対応を検討させて頂きます。

アプセット鍛造(熱間)

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


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謹賀新年。

明けましておめでとうございます。旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼を申し上げます。
本年も、なお一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

新年の堅苦しい挨拶はさておき本年の干支「戌」年ですが、皆様にとって素晴らしい一年であります
ように祈念いたます。

さて、大変久しぶりのブログになってしまいましたが、ご覧頂いている方には本当に申し訳ございません。これからも、「鍛造ブログ」頑張ってまいりますので、何卒宜しくお願い申し上げます!


さて、ここ数年の小生の元旦の行事といえば、初詣もそこそこにして家族のアッシー君として、関空近くにある、アウトレットモールの初売りバーゲン会場へ駆け込むのが定番となっております(笑)。

いつも、開店時間より早めに到着していますが、案の定人気店での福袋などは、開店前にもかかわらず何十人以上もの長蛇の列ができ、どこが最後尾かわからない程の混雑ぶりでした(汗)。

さすがに数万円の福袋は買いません(買えません...涙)が、市価の30~50%OFFの衣料品や雑貨、アクセサリー、シューズなど、とても魅力的な商品がたくさん販売されていました。

小生は基本アッシー君なので、買い物する気など全くなかったのですが、周りにつられて仕事用の革靴を一足、衝動買い?してしまいました(汗)

ですので、毎年お正月明けは、お年玉にお買い物と高額な出費が続き、「金欠病」でアップアップしております(涙)。


私話はさておき、そろそろ真剣に本年初年の「鍛造ブログ」を、スタートさせたいと思います。

さて、本日はアップアップつながりで?(笑)、「アプセット鍛造」方法について少々お話しをしたいと思います。

アプセット鍛造とは、別名「すえ込み鍛造」や「ツバ出し鍛造」とも言われて、おもに丸棒の先端部及び中間部に材料径より大きいツバを張り出させる方法です。

外観的には細長い軸形状でありかつ、その一部分が帽子のツバのように張り出している形状、例えば下図のような形状ですね、


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一般的に、このような形状を旋盤加工で太い丸棒から削り出すのは時間がかかり、加工コストも高く
なりがちなので、ならばこの鍛造方法で一気に成型しちゃえば、材料費も仕上げ加工時間も助かりトータルコストの低減につながりますよね。


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鍛造完成品


また、アプセット鍛造品を成型する機械のことを「アプセッタ」と言い、材料の軸部をグリップする機構と軸方向にプレス成型する機構を併せ持った構造になっており、一般的な上下方向で加圧するプレスとは全くの別物になっています。

加えて、アプセット鍛造は写真のように、パンチで軸方向に加圧するため材料の先端部が潰れ、材料の繊維方向の流れ(鍛流線)を複雑化させることになり、丸棒から旋盤加工で仕上げるのと比べて強靭な製品になります。


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鍛流線


用途としては、トラックや産業用機械の駆動軸や回転力伝達部品、バルブの弁棒など、主に利用されています。

また、一般的にアプセット鍛造は型鍛造と比べて成型形状は制限されますが、金型費は相対的に安くなる場合が多いのも特徴です。

弊社では、型鍛造専門でアプセット鍛造と設備が全く違うので、このような製品は製造できませんが、企業ネットワークによる対応や、ご相談にはお答え可能です(笑)。


その他、熱間鍛造についての疑問やご質等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
私、徳田が「熱間鍛造のプロフェッショナル」として、懇切丁寧にお応えさせて頂きます。

それでは、改めて本年も宜しくご厚情を賜りますようお願い申し上げます。


※挿入写真/株式会社ミヤジマ様 御提供(使用許諾済)

インパクト成型

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


9月は、通年台風シーズンの真っ只中になりますが(苦笑)、先日日本列島各地で大変な風水害の爪痕を残した台風18号も過ぎ去り、朝夕はめっきり気温も下がり、大変過ごしやすくなってきましたネ。ようやく秋の気配を感じられる季節になってきました(笑)。

今夏は各地で天候不順で、真夏にもかかわらず雨天が続いたり、酷暑であったりと気候変動が激しかったのですが、これも地球温暖化の影響かもしれませんね...。


我が家でも今年の夏の夜は余りにも寝苦しい日々が続いていたので、毎晩エアコンをつけっ放しで
就寝していたのですが、なんと電気代の請求金額を見たとたん目の玉が飛び出ました...(汗)。

やっぱり仕事と同様に、無駄なコストはセーブせねばとセコく考える今日この頃です(苦笑)。

皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?


さて、このところのお客様のご相談内容を整理してみますと、冷間鍛造方法で製作した方がメリットの
あるような形状の部品が多くなってきております。

基本的に冷間鍛造は熱間鍛造と比較して、プレスで成型したときの材料展伸性が良くないので、
金型を複数個以上使って、材料を少しずつ回数を分けてプレス成型していきます。


但し、どんな世界にも例外があるように、冷間鍛造の種類の中にはインパクト成型といって、材料スラグを金型の中に装填し、ワンパンチ(1回プレス)で長いパイプ形状に成型できる方法があります。

例えば、大きめのボタン形状のアルミ材(スラグ)を金型に入れて、パンチ(ボス)で垂直に加圧するとアルミの材料が、こんな感じでスルスルとパンチの外周に沿うようにせりあがって成型されます。


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<インパクト成型のイメージ図>


イメージ図では4工程に分かれているように見えますが、この一連の流れは実際には1工程(1パン
チ)で成型されます。だから量産性は非常に高く効率のいい製造方法の一つでもあるんですね。

しかし、逆にいうと小ロットでは製造コストを下げにくいと言える訳でもあるんです(汗)。


一例をあげますと、材料がアルミニウム場合、身の回り品でいえば、油性サインペンや口紅用ケース、ヘアスプレー缶等の筐体がこういった「インパクト成型」法で作られていることが多いようです。

このインパクト成型はアルミニウム材のとの相性が非常良く、特に肉厚を薄く、直径に対して全長が
に長いパイプ形状に最適ですなんですね。


弊社でも一時、このようなインパクト成型でVTR用アルミヘッドの製品を量産しており、冷間鍛造にも対応させて頂いております。
このように中野鍛造では、部品の形状に応じて、熱間鍛造/冷間鍛造それぞれのコストメリットを検討した上で、柔軟に対応させて頂いております。

もし、熱間鍛造で部品製造を行なうのか、冷間鍛造で行なうのか迷われている場合は、ぜひ中野鍛造まで、お気軽にご相談ください!最適なアドバイスをさせて頂きます(笑)。


「モノづくり魂は常に熱く、仕事はクールに」をモットーに、社会に役立てるように頑張っておりますの、これからも中野鍛造をご愛顧のほど宜しくお願い致します

暑さ対策について

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

大変ご無沙汰しておりました。久しぶりの更新です。

ありがちな業務多忙を理由に、しばらくブログ更新をサボってしまっておりました(苦笑)。

これから、改めて気合を入れ直して頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします!


さて、夏も終わりに差し掛かっておりますが、振り返りますと今年の梅雨は、各地でゲリラ豪雨を降らせたり、九州地方ではたくさんの人命が奪われるなど、私自身といたしましては、特に自然界の猛威をひしひしと感じる夏でした。

ちなみに、7月9日の瞬間ゲリラ豪雨があった時などは、落雷による停電や自宅近くの道路はマンホールから下水が逆流するなどして、周辺道路なんかも一時的に冠水して交通障害が発生していましたネ・・・。

本当に、昨今の世界的な異常気象には、とても懸念を感じずにはいられませんネ。
 
 
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さて、あと少しで暑い夏が終わりますが、実は鍛造工場にとって夏は1年で一番つらい季節なんですよ(汗)。

と言いますのも、ご承知のように弊社は熱間鍛造が主力業務ですので、工場内の加熱炉からでる排気熱や鍛造後の製品が工場内の気温をもの凄く上昇させます。

例えば、ダクトで熱風を屋外排気しても、加熱炉本体からの発熱は防げないので、なんと工場内では40℃近くに温度が上がり、炉の周辺になりますと50℃以上にもなります。
 
 
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もちろん、その暑さゆえに鍛造スタッフは多量の汗をかきますが、実は工場内は火を焚いているので、
意外に湿度が低く、梅雨の時期の蒸し暑さと違って、結構「カラッ」としているのがまだ救いですが・・・(笑)。

それでも夏場は暑いことには変わりなく、弊社では33年前に、夏場は大変涼しい「関西の軽井沢?」(笑)と言われる、兵庫県北部にある神鍋高原の近くに鍛造工場を移しまして、夏場の職場環境を少しでも改善できるように対応してきました。

また、工場設備の暑さ対策としては、誘導加熱炉の導入を推進して、発生熱源をコンパクトにしたり、鍛造プレスの自動化を図るなど、夏場の業務負担を少しでも軽減できるように努めております。

中野鍛造では、「高品質・高精度な製品は、環境の整った工場から」をモットーに、これからも皆様の期待に応えるべく、益々精進いたしますので、引き続きご贔屓を賜りますようお願いいたします(笑)!


【追伸】
今回は久しぶりのブログと言うことで、弊社の「暑さ対策」について書かせて頂きました。

また、次回からサボらずに(苦笑)、本業の「鍛造」について、皆様のお役に立てるよう、しっかりと掘り下げて記載させて頂きますネ(笑)。

熱間鍛造と冷間鍛造

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

まだまだ朝晩の冷え込みが厳しい中、ようやく日中の日差しは春を感じさせてくれるようになり、間違いなく、春に向けて季節が一歩一歩進んでいくのがわかるようになってきましたネ。

また、この時期は卒業式が真っ盛りの季節でもありますが、私も娘の卒業式で家内と一緒に出席してまいりました。

皆様におかれてはいかがお過ごしでしょうか?

あとひと月もすれば、ポカポカ暖かい桜の季節ですね~。ホント待ち遠しいです(笑)。



さて、今回は熱間鍛造と冷間鍛造の違いとその特性についてのお話...

最近のお客様からのお問い合わせのなかで、「熱間鍛造で冷間鍛造レベルの公差で製造できませんか?」とのご相談が多くなってきております。

また「熱間鍛造品の一部分を切削レスで使いたい」と要望されるお客様も増殖中?(笑)

そんなわけで大雑把ではありますが、以下に説明させて頂きます。

まず熱間鍛造とは、書いて字のごとく金属の素材(一般的に丸棒)を所定の長さに切断後、加熱して鍛造しますので、成型後常温になれば製品は必ず収縮します。

ですから、金型はその収縮率(延尺)を考慮して少し大きめの寸法で製作しますが、厳密に言えば夏場や冬場の外気温度差で製品寸法は多少のバラつきが発生します。

また大きさにも依存しますが、鍛造時(非鉄金属材の場合は基本的に一回成型)には、150t~500tの大きなプレス圧力が加わり、焼き入れした金型といえどもその瞬間には「弾性変形」しており、製品の歪や反りの発生につながります。

なので、高精度な鍛造部品が必要な場合は、あと工程で切削加工を追加して仕上げる方法を採用する場合が一般的です。

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加熱された金属素材(左)と熱間鍛造直後の鍛造製品(右)。鍛造直後も高温のため、常温になれば製品は収縮します。


一方で、熱間鍛造とは違う冷間鍛造方法は、材料を常温のまま成型しますので「金型寸法」と「製品寸法」はほぼ同じになり、仕上り精度や公差レンジといった点では熱間鍛造より優れ、場合によっては切削加工無しといった設計も可能です。

但し、一般的な冷間鍛造の場合は、材料を加熱していない為に素材の変形抵抗が大きく、また1プレス当たりの素材変形量も少なく、複雑な形状の製品を成型する場合は、一度に金型が複数個以上必要になり、ロット数量が少ないと採算性が悪くなる傾向にあります。

その点、熱間鍛造の場合はロット数が数千個以上であれば経済ロット数になり、製品の対応できる形状としても熱間鍛造は金型設計自由度が高く、金型が上下分割できれば基本的に成型が可能です。

主に熱間鍛造方法というのは、「一次素材から二次素材へ変える製造技術」という事であり、熱間鍛造品単体では部品ではなく基本的に「二次素材」だと概念をお持ち頂くと大変ありがたく思います。

とは言え、形状にも依存しますが、熱間鍛造品で弊社独自の<バリ無し鍛造技術>を使えば、冷間鍛造では難しい形状と冷間鍛造品並みの精度を出すことが可能です(笑)。

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バリ無し鍛造技術による当社熱間鍛造品


但し、マテリアルは黄銅材に限りますが・・・(汗)

その為には、お客様の図面を基に弊社との二人三脚による互恵関係を構築し、鍛造性向上と高品質化できるような提案をご快諾頂くことで、末永くコストパフォーマンスの良い製品を供給させて頂けると思います。

ぜひ、熱間鍛造で冷間鍛造並みの製品精度を出すことができればとお考えの方は、<非鉄熱間鍛造品のエキスパート 中野鍛造>へ是非、お問い合わせご相談をお待ちしております(笑)!


高精度な熱間鍛造品については、こちらのページでも解説しています。